訪問看護の家族対応・家族フォロー

私たちは、服薬管理のために訪問依頼を受けることがあります。

例えば糖尿病患者で全く血糖コントロールが出来ておらず、高血糖や低血糖も起こすので服薬管理をするために訪問看護依頼になることがあります。
また終末期で疼痛コントロールが必要になるため訪問依頼されることも。

そんな時には、薬カレンダーや配薬ボックスを使用して服薬管理をしていくことも多いです。
時にはデイサービスの送迎の方やヘルパーなどと協力して毎日服用できるよう声かけ、確認をすることもしばしばあります。
高齢者は薬を自己管理することが難しく、周りのサポートが必要不可欠だなと思うことが、日々の訪問の中でよくあります。

ある時、訪問依頼を受けて伺った家を訪れてみてびっくり。これまでの飲みかけの内服薬がたくさん出てきたのです。
中には処方されたまま手つかずのものも。煙草のヤニで薬袋は黄色く変色し、座薬は溶けて変形してしまったものも!

そのため、私たちはまず薬の整理から始めました。
現在服用中の薬だけを配薬ボックスやカレンダーを利用してセットしたのですが、次の訪問時必ず数日分の薬が残っていることが続きました。

しかし本人からは、「この薬はここに効くんだよね。先生が大事な薬だって言っていた」と聞くこともありました。
なぜここまで理解していながら、服用出来ないのか?と不思議でした。

始めは認知症があるため、医師の指示通り服用することを忘れてしまったのかと思いましたが、時間の経過とともに、服用することとしないことの葛藤が本人の中にあることがわかりました。

薬が重要であることは理解できる、
しかし薬を飲んで本当によくなるのか、ならば飲まなくてもいいのではないかという疑問も持っていたのです。

ただ飲めることもあったのです。それが「この薬は、先生が元気になるといっていましたよ」という前向きな声かけが、ケアマネからあった時でした。

それから私たちは、毎朝電話をかけることにしました。
「そろそろお薬を飲む時間ですね」「今度病院にいったとき、この薬のおかげで検査結果がよくなっているといいですね」といって内服を促しました。
始めは、電話をすることで服薬してくれるだろうかと不安でしたが、電話を継続することで徐々に服薬できるようになったのです。

そして実際に検査結果の改善も見られるようになりました。
受診の時、先生から「○○さん、頑張りましたね」の一言で利用者のモチベーションも一気に高まり、「自分で飲めるようにがんばるよ」という声も聞けるように。

私たちの電話回数も徐々に間隔を伸ばし、数か月をかけて利用者自身で服薬管理をすることが出来るようになりました。
これは本当に一例ですが、訪問看護ってご自宅に訪問するだけが仕事ではないんですね。

実際に訪問をしなくても、私たちが出来ることはあるのです。電話で声かけをするなど、
さまざまな手段、方法を使って利用者をサポートすることが訪問看護だと、改めて実感しました。