
私たちの訪問看護ステーションにはさまざまなルートで訪問看護の依頼があります。
認知症がひどく病院にこれ以上入院できないので自宅に連れて帰りたいが自宅での介護不安があり訪問看護を希望される家族、終末期で残された時間が少ないから自宅で過ごしたいと依頼が来ることもよくあります。
自立している利用者の訪問看護依頼
しかし時には例外も。自分の身の回りのことはなんでもできるし、家族も協力的なので生活には困っていない。
ただ持病があり、万が一の時のために、早めに訪問看護を導入しておいたらどうかと主治医からすすめられて依頼されることもあるのです。
そのような利用者は、始めは30分未満の訪問から始め、ADLが低下したり状態が悪化してくれば、1時間未満の訪問に変更していくといった方法を取ります。
しかし指示書に特別な指示はなく、自立している利用者の場合、一番初めのサービス導入時、この人のニーズは何だろうか、そして、何をしてあげられるだろうか?と思うのです。私たちは訪問看護というサービスを利用者に買っていただいているのです。そのため、その時間を充実させ満足感を持ってもらうことが大切だと考えています。
満足感を得てもらうためにできること
もちろんバイタルサインをはかり、コミュニケーションをとっていると、30分なんてあっという間の時間です。
しかしながら、私たちは少しでも満足感を得てもらうため、試行錯誤するのです。
コミュニケーションを取りながら、困っていることを聞き出し希望に沿うようなケアを行います。
例えば爪切りや足浴、マッサージといったことですね。時には庭に誘って外気浴をすることも。
それでも本当に何をしようかと悩む場合もあります。在宅生活は自立されており、体調も安定している。
また薬の管理も家族が完璧にしているし、毎日お風呂に入り皮膚トラブルもない…。
訪問してすぐに「さあ、おしゃべりしましょ」と利用者に声をかけられ、訪問時間のほとんどをおしゃべりに投じることもあります。
恐るべし!聴診器の威力
そんな時には、少しでも満足感、看護師からやってもらった感を持ってもらうために、丁寧に聴診器をあてることにしています。
高齢者というのは不思議なもので、聴診器をあててもらうことですごく安心する人もいるのです。
特に高齢者で胸が痛いときがある、なんだか体が重いなど不定愁訴が多い人の場合、聴診器で肺や心音をしっかり聞いて「大丈夫ですよ」伝えるだけで、訴えが激減することもあるのです。
また胸部の聴診の流れから、腹部の聴診や触診をしてお腹の動きや張りのチェックにもうつりやすいですね。
コミュニケーションだけでお腹の調子や排便を確認することもできるけれど、私たちも実際のお腹の状態を確認することが出来るので、聴診器を当てるメリットが大きいのです。
時には、利用者や家族が見逃しているお腹しわの間の垢やへその中に膿がたまっている状態を見つけ、早期に対応できたということもあります。
今ではバイタルサインをはかった後に、自分から聴診器を当ててと言わんばかりに催促してくる利用者もいるほどです。
まとめ
上記のように、利用者に少しでも満足感を得てもらえるように、ニーズをつかみ取ろうと試行錯誤しています。
そんな中でやってもらった感を出すためには、聴診器をうまく使うことも重要なことの一つだなと日々感じています。