訪問看護の家族対応・家族フォロー

私たちは、普段生活をしている環境の中に入っていきます。
掃除が行き届いていなくても、汚れた衣類を着ていても、それがありのままの利用者だと受け入れているので、気にすることはありません。

しかしながら、ある利用者のお宅では、私たちが訪問すると、「あー大変だったあ、忙しかったあ」という家族がいたのです。
始めはなぜか不思議でしたが、訪問回数を重ねるとその理由がわかりました。

利用者は寝たきりでしたが、オムツ交換しようと思ってオムツを開いてもいつも汚れていないのです。
そして妻に聞くたびに「今きれいにしたんだよ」と。口腔ケアをしようと思っても「今入れ歯洗ったところだよ」と。

老々介護で体の不調を訴える主介護者の妻の負担を軽減させるために導入された訪問看護でしたが、訪問が始まっても妻の献身的な介護ぶりは変わりませんでした。
むしろ、人が来るのだから家の中を整え、夫を少しでもきれいにしておかなければ…と一生懸命になるような行動があったのです。

私たちがケアをするからそのままでいいんですよといっても、なかなか受け入れられず、このままでは私たちが行くこと自体が妻の負担になるかも知れないと思うほどでした。

そんなある時、訪問予定の20分前に自宅に到着したことがあります。
どの利用者にも訪問ルートや道路状況によっては訪問時間が前後すると伝えてあるので、20分くらいだったら問題ないと判断して訪問したのです。

自宅に入ると、まさにオムツ交換の途中でした。
すぐに妻の手伝いを始め、ある程度のところまで出来たら私たちにバトンタッチをしてもらいました。
任せてもらうことで妻は「あーよかった」と。
本当はオムツ交換なども大変だけれど、自宅に人が来るということで、わざわざ交換してくれていたのです。

老々介護では時にこのようなことがあります。
特に排泄、オムツ交換などを第3者に任せるのは抵抗があるという介護者もいます。
また、まだまだ自分はできる、頑張らなくてはと、助けを求めることにも抵抗がある人もいます。

そのような考えの妻だったため、それからは、予定時間の約20分くらい前を狙って不意打ちで訪問することにしました。
そして、オムツ交換などのケアを少しずつ訪問看護師に移行するようにしたのです。

この作戦は見事成功。少しずつ妻の介護負担を軽減することが出来、ケアの間、妻はソファーで寝そべっておしゃべりしながら、私たちを見守るようになってくれました。

昔の人の感覚では、誰かが来るということには身構えるし、失礼がないように身支度を整えておかなくてはと考える人は少なくありません。
しかし、それでは妻の介護負担を軽減することはできないですね。

もちろん介護は自分がやってきたという妻の信念やプライドもあるので、それを上手に持ち上げつつ、私たちは妻の伴走者として徐々に踏みこんでいきました。
訪問看護を依頼しても、まだまだ介護を他の人に任せることに罪悪感を感じる介護者もいます。

そのような場面では、決して焦らず時間をかけながら介入していくことが重要だなと改めて思った事例でした。