訪問看護の家族対応・家族フォロー

認知症の利用者で、一日に何度もコンビニに買い物に行く人がいました。
家族がいるのですが仕事もあるため、日中は利用者と高齢の夫二人だけで過ごしている世帯でした。

そのため誰も買い物をコントロールすることが出来ず、気が付くとコンビニに…ということがよくあるのだそうです。
しかも購入するのはいつもお弁当類。
多い時には一日に7回も8回も行くコンビニなのですが、果たしてそれだけ購入して全部食べることが出来るのでしょうか。

実は、その利用者は自分の旦那様のためにコンビニに出かけることがほとんどで、いつも旦那様の好きなものを購入していたのです。そのため毎回同じものをかごに入れてレジに持って行っていたのです。
コンビニも商売ですから、レジに出されたものは会計をしますね。

そのため家には食べきれないお弁当が散乱。また室内の異臭や虫の発生など不衛生な環境を生み出していたのです。
ヘルパーの利用もしていましたが、片付けても片付けても次から次へと増えていくお弁当に困り果てていました。

訪問看護は週2回の利用でしたが、その状況をどうにかしたいと考えていました。
そこでケアマネを中心として、コンビニと連携できないかということを考えたのです。

買い物に行っても決して売らないでほしい。そんな家族の切実な思いをコンビニに伝えてみようと思ったのです。
しかしそれには、認知症であることやある程度家族の問題もお話ししなくてはいけません。
またコンビニも売り上げが上がるほど利益になるので、全く売らないで…というお願いが出来るはずもありません。
そこでお願いした方法は、次の通りです。

まず家族と訪問看護師、そしてケアマネさんとコンビニ店長にお願いに行きました。
コンビニ店長もおかしいなと思いつつも、ご近所さんだろう、大家族かな?と思っていたそうです。

そこで私たちの事情を話すと、わかるけれどまったく売らないとお断りするわけにはいかないということ。
なぜなら、以前に大きな声で店員を怒鳴ったことがあるということ。そのためレジに持ってきたものを売らないというのは、トラブルになりかねないといわれたのです。

話し合いの結果、利用者がレジに品物を持っていく、その時にはなるべく店長さんが対応する。
そしてもうすでにその日にお弁当を購入している場合は、かごの中から「これは購入していたからこれはどうですか?」と弁当は抜き出してサラダやデザートなど全く別のものを提案するという具合です。
またご飯ならパンを、アルコール類だったらコーヒーをといった具合に別のものを提案するという風に考えたのです。

これを行った結果、一回にかごに5個程度入れていた弁当も、レジで仕分けることで弁当の購入は1個、そして後は別のものにきりかえることが出来ました。
利用者も次第に慣れていき、店長の提案を次第に受け入れるように。この方法がうまくいくようになるまで、1か月くらいかかりましたが、買い物の量は激減。自宅に散らばる弁当の数も激減したのです。

認知症の人の場合、これまでの生活習慣を繰り返してしまうことも多いので、歩ける限りコンビニに通うことをやめることはできないでしょう。
また家族のことを思う気持ちや自尊心もあるので、それを損ねるわけにはいきません。

コンビニまで行けることが、その方の健康のバロメーターにもなると考えることもできます。そこで私たち周りが環境を少しでも整えて行くことが重要だと思いました。

今回コンビニと初めて連携をとったのですが、やはり地域で暮らす高齢者を見守るためには、協力も不可欠ですね。
また認知症で何度も通ってしまう状況はなかなか変えられないので、協力を得られたことは本当に良かったと感じています。

本当に地域で生活する、在宅生活を支援するには、個別性に応じていろいろな人とかかわって協力して見守っていく必要があると強く感じたケースでした。