
看護学生は、卒業までに決められた実習をこなさなくてはいけません。
その中で在宅医療を学ぶ実習もあるので、当ステーションにも看護学生を受け入れたことがあります。
著者である私も学生時代には病院や地域での実習をこなしてきた経験もあり、学生がどんな気持ちで在宅医療の看護実習をこなすのかということを少しは理解しているつもりです。
ただ改めて学生にかかわってみて、学生がよくぶつかりやすい訪問看護の壁を感じることがあるので紹介していきたいと思います。
在宅でのケアの基準は利用者様によって異なる
私たち訪問看護ステーションで訪問する利用者様は1歳から105歳までいます。
病院であれば小児科や成人病棟、療養病棟など年齢も疾患もおおよそ分かれています。
しかし在宅では、年齢も疾患も幅広いので、利用者によって同じケアでもやり方が全く異なるのです。
例えば病院でも看護学生が取り組みやすい清拭というケア。
病院では、みんな同じものを使用して行います。
しかし在宅の場合は、体をふいて清潔保持に努めるという目的な同じなのですが、その方法は各家庭で全く違うのです。
例えば、お湯を沸かす、ポットのお湯を使用するというところから異なりますし、タオル1本しか用意していないお宅もあります。
また布団かベットか、その人が座位をとれるか、起立できるかといったADLによっても全く方法は異なるのです。
私たちは利用者の環境、資源、また能力などを考慮しながら、その利用者に合った清拭というケアの方法を確立していきます。
つまり在宅は個別性の強いケアを提供できるというメリットがあるのです。
ただその方法は、病院実習では見たことのないようなものもあるので看護学生としては驚くことも多いようです。
病院で経験したことが在宅では全くできない!
これまで病院実習で清拭というケアを何度か経験してきたので私はできると思っている看護学生も少なくありません。
しかし在宅生活ではその人にあった方法で提供するので、自分が思い描いていた清拭というケアができないという混乱が起きてしまうこともあります。
そのためできなかったという落胆、そしてショックが大きいこともあります。
これも一つの看護学生が乗り越えるべき課題になるのですが、在宅の実習を行うということは、病院では学ぶことのできない個別性を重視したケアを提供することを学ぶことのできるチャンスになります。
看護学生は、不安と期待とやる気に胸を膨らませて実習にきますが、ありのままの在宅医療を見てほしいですね。