
脳性麻痺児の自宅へ週2回訪問しています。
もうお互いに慣れてきて、良い信頼関係が出来ていると感じますが、そこに至るまでは本当に大変でした。
脳性麻痺児の訪問で本当に大変なのは、訪問開始前と言っても過言ではありません。
その経験をここにご紹介したいと思います。
脳性麻痺児の訪問看護は、訪問前の依頼からすでに訪問看護が始まっていると考えるべき
小児の訪問看護の依頼というのは、退院前の早い段階から依頼が来ることが少なくありません。主治医やケースワーカー、メディカルソーシャルワーカー、相談支援専門員といった医療にかかわる人、また地域の保健師や両親から直接相談を受けて始まることも多いです。
どんな経路であれ、小児の場合、利用を受けてくれる訪問看護が少ないので、契約を結ぶまでにかなりの時間がかかることが多く、早くから準備を始めることが重要です。
小児の訪問看護は受け皿が少なく、訪問可能な範囲なのか、実際の移動ルートが重要になる
通常訪問看護ステーションでは訪問できる範囲を大体決めています。
もちろん地域に根差した訪問看護なので、縄張り的なものもあるのですが、限られた看護師で多くの利用者を訪問するためには、訪問範囲やその移動ルートを決めるのはとても重要なことなのです。
しかし小児の訪問の場合は、家族からの強い要望があってもその受け皿がない現状が背景にあることが多いため、退院したくてもなかなか退院することが出来ない、結局受け皿がなくても、両親が不安を抱えながら退院をすることになるのです。
もしも小児の訪問依頼があった場合には、まず訪問できる範囲かどうかということをしっかり見極めます。
受け皿がないという現状を考えて、多少遠くても訪問を決定することも少なくありません。
もしも受け入れができない場合には、ほかの訪問看護ステーションに相談をし、つないであげるということまで行っています。
契約を結ぶ前に、家族や医師と必ず面談をする
訪問の依頼を受けてから、契約を結ぶ前には、必ず家族、そして医師や看護師と面談をします。入院中に依頼があれば退院後に必要とされるケアの技術を両親と一緒に指導を受けることもあります。
また退院前にもご自宅に訪問し、在宅に向けての方向性、医療的な問題、注意点、家庭環境などを確認します。
入院中の医療機関から自宅までの距離が離れている場合の対処
脳性麻痺児が入院しているのは、大体設備の整っている大きな病院であることがほとんどです。そこから在宅に帰るとなると、入院中の医療機関からの距離は遠くなることもあります。
私が経験したケースで一番遠かったのは、約120キロくらいでしょうか。
在宅での生活が始まったら、その距離を緊急時行くことは無理ですし、退院後ちょっとした風邪などで受診する場合に備えて、近隣の小児科のある総合病院を紹介されることもあります。
その場合は、退院前に両親が代理受診しておくなどをおすすめしています。
呼吸器を装着している場合の対処
また呼吸器を装着して退院する場合は、居住区管轄の電力会社や消防などにも連絡を入れておく必要があります。
万が一、停電になったときや救急車を依頼する場合に備えてです。
そのような準備があるために、入院中からしっかりとかかわり、退院後に必要と考えられる協力体制を依頼しておく必要があるのです。
私の所属する訪問看護ステーションでの小児対応の依頼があった場合は、必ず面談をする
私の所属する訪問看護ステーションでは、なるべく依頼があったら遠くの病院でも一度は面談に行くということを心掛けています。
それが後で訪問の契約につながらないとしてもです。
これまでに一番遠かった病院は他県のため、車で約2時間半かかるところでした。
里帰りで実家に帰って出産したら、脳性麻痺だった。長く入院していたけれど1歳を超えてやっと自宅に連れて帰る決心がついたという経緯があり、実家ではなく現住所の近くの私たちステーションに依頼がありました。
数回訪問しましたが、そのたびに
☑本当に自宅に帰ることが出来るだろうか?
☑実家にいたままのほうが安心かな?
という両親の迷いがありました。
結局、その家族は実家に退院ということになったので、
訪問につながることはありませんでしたが、両親と一緒に退院指導を受けたり、退院準備を進めていくことは私たちにとっても良い経験になりました。
脳性麻痺児は家族ケアも重要である
元気な赤ちゃんが生まれると思っていたら、脳性麻痺だということがわかった…
これはどのご家族も言われることです。
私たちが家族にかかわるときには、すでに落胆、悲観という時期を乗り越えていることもあります。
しかしいつの段階においても不安や混乱というのはつきもの。特に脳性麻痺児の中には、医療的なケアが必要になることも多く、通常の子どもの発達とは異なるのです。
そのため、私たちも小児の訪問要請があればなるべく受け入れるようにし、家族に寄り添い子どものケアにかかわっていきたいと思っています。