
訪問看護をしていると、さまざまな家族に出会います。
そんな中で一つ印象に残るエピソードがあったのでご紹介します。
在宅の見取りの訪問看護依頼
近隣のクリニックから依頼があり訪問を始めた利用者さん。
もう余命が日にち単位であと10日持つか持たないか…といわれるほど状態は悪化していました。
しかし、利用者本人の強い意志とその妻の希望で在宅看取りをしたいと、私たちの訪問看護が入ることになったのです。
クリニックからの情報では、以前に姑の在宅看取りをした経験もあるし、ケアマネも長年の付き合いだから、すぐに家の準備が出来ると聞き、私たちのすぐにサービスを開始できると思っていました。
在宅での見取りに対する家族の温度差
利用者と妻は、最後まで家で生活したいと自宅で待っていてくれましたが、
その家には何とも言えない表情をした同居のお嫁さんがいたのです。
明らかに訪問看護や在宅看取りを受け入れたくない様子のお嫁さん。それ以外の家族は普段仕事でいなかったので、どのようにとらえているのかはわかりませんでしたが、家族の中で温度差があることはすぐに理解することが出来ました。
もちろんクリニックでは、普段通院につきそう妻と本人の希望しか情報を知らなかったでしょう。そのため私たちも自宅に訪問して初めて分かったのです。
このように自宅での介護、そして在宅看取りに関して家族内で温度差があることはよくあります。
お嫁さんはいるけれど、ノータッチ。そのほかの息子たちは仕事でいない…その場合は、多々として老々介護になってしまう場合がほとんどなのです。
残された余命を慣れ親しんだ自宅で過ごすことは、利用者とその妻にはとても満足のいくことでしょう。
しかし在宅で介護をするという以上お嫁さんが立場上全く関与しないわけにはいきません。
そのため、嫁という立場では、在宅看取りは予想以上に受け入れがたいものでもあるのです。
私たち看護師も誰か自宅にいれば、期待して声をかけてしまうものです。
しかし家族関係を悪化させないようにかかわる必要があります。
在宅での見取りはキーパーソンを決めることが大切
家族の協力は必須ですが、その中でも積極的に、しかも密にかかわるキーパーソンとなる家族を決めることが重要ですし、残りの家族は様子を見ながら、距離を置きながらだんだんとかかわる必要があるかな。
最後までキーパーソン以外の家族とはあまりかかわれなかったということもよくあるケースです。
訪問看護師として見取りを行う場合に大切な事
訪問看護師として大切なことは、家族の介護介入の仕方を尊重すること。
決して無理をさせないこと、そして後悔をさせないことと思います。そして、もしも利用者が亡くなった後も家族の生活は自宅で続くため、この家での在宅看取り生活を嫌な思い出にしないことが大切だと考えています。
在宅看取りは、美談のように取り扱われることも多いですが、現代社会の家族構成や家族関係などを考えると、家族間にも在宅看取りに対する温度差があり、簡単にはいかないことが多いです。訪問看護師としては、その家族の特徴や関係性を読み取りかかわっていくことが重要だと常に考えさせられます。