
私が訪問看護師に転職したきっかけは、病棟勤務時代の先輩が訪問看護ステーションを起業したことでした。
先輩に一緒にやってみないかと誘われた当時、ちょうど夜勤のない仕事に転職したいと思っていた私は、「日勤専従になれるならいいかも」とそれほど深く考えずに訪問看護師になることを決めました。
以前から訪問看護に興味を持っていたわけではなかったので、訪問看護と聞いて思ったことは「ベテラン看護師さんが多そうだけど私大丈夫かな……」という程度。
具体的な知識はほとんどゼロでした。
そんな情けない状態で転職した私ですが、実際に訪問看護師になってみて特別困ったかといえばそんなことはありませんでした。
終末期の利用者さんが多いと予想していましたが意外とそうでもなく、リハビリや入浴介助、内服管理といった依頼の方が多いくらいで、病棟看護師として一通りの看護技術ができれば訪問看護師としてもおおむね問題なくやっていけると思います。
多かったのは褥瘡の処置・酸素の管理・吸引、次いで点滴や経管栄養、時々ストマの管理なども行いました。
病院ほど物品が揃っていないので工夫が必要になることは多々ありましたが、基本は同じですからそれほど戸惑うことはありませんでした。
ただし知識の面では、勉強しなければならないことは思った以上にたくさんありました。
介護保険や医療保険の制度の仕組みを覚える事
いちばん大変だったのは訪問看護に関係する制度や仕組みを覚えることです。
転職後しばらくは、時間があれば介護保険制度や医療保険制度について勉強していました。
これが分からないと、自分の仕事がどのようにして成り立っているのか分からないのです。
どうやって訪問看護の依頼が来て、医師から指示を受けるのか、またどうすれば報酬が発生するのかなど、3か月くらいでだいたい理解することができました。
盲点だったビジネスマナー
勉強といえば、盲点だったのがビジネスマナーについてです。
恥ずかしい話ですが病院で働いていた頃は名刺なんて持ったことがありませんでしたから、名刺交換の作法と言われても分かりません。
電話の受け答えなども病院時代はあまり意識せずに行っていましたが、転職してすぐに新人向けビジネスマナーの本を読んで勉強しました。
訪問看護師として働く中で絶対に関わることになる医師やケアマネージャーさんをはじめ、訪問介護のヘルパーさん、デイサービスや訪問入浴のスタッフさんなどは、全て自分とは別の会社の方々です。
訪問看護の仕事は自分たちだけでは決して成り立たず、医師やケアマネージャーさんから依頼を頂いて初めて仕事をすることができるので、電話でお話しする時や実際にお会いする時、思った以上に気を遣いましたし緊張しました。
もちろん利用者さんのお宅に伺う時にも、靴の揃え方ひとつにも正しいマナーがあります。
若い世代が多かった病棟では中堅という扱いだったアラサーの私ですが、この業界では圧倒的に年齢が下の方だったので、なおさら粗相のないように気を付けていました。
まとめ
病院とは全く違う新しい世界で知識を得られることは楽しかったので、勉強することはそれほど苦にならず、毎日を新鮮な気持ちで過ごすことができました。
仕事を始めて半年くらい経った頃には、何も考えずに転職したとは思えないほどに、私は訪問看護の仕事をおもしろく感じるようになっていたのです。