
訪問看護を始めるようになって、不思議に感じることがありました。
それは感染対策についてです。
例えば病院では、入院したときの採血や術前の検査などで、B型肝炎やC型肝炎、エイズ、インフルエンザやMRSAなど感染症を調べることは少なくありません。
そのため入院して早期にその患者さんが保菌者であるかどうかを知ることが出来、接する時には感染対策をすることが出来ます。
院内感染なども大きな問題になるので、院内感染対策委員会などの活動も活発です。
大きな病院に所属する訪問看護室では、そのマニュアルにのっとり対策をとることもできるでしょう。
しかし地域の小さな訪問看護ステーションになると、少し事情が異なりますし、在宅訪問する利用者に感染症があるかないかが全くわからないことがあるのです。
例えば、これまでに持病や手術歴があり、病院からの紹介で在宅診療や訪問看護を始める場合には、その利用者さんに関するサマリーを受け取ることもあります。そこから感染症についての情報を得ることが出来ます。
しかしながらケアマネや行政からの紹介で訪問看護が開始される場合、感染症の有無がわからないことも多いです。
また高齢者で認知症、独居の場合は、本人からの問診でも確認できないこともほとんどなのです。
そのため、訪問して何か月か経過、採血をした時に初めてB型肝炎だったと判明する場合や、発熱して培養検査をして初めてMRSAの保菌者だったとわかることも少なくないのです。
もちろん私たち看護師は、どの利用者さんに対してもマスクや手袋着用し、ケアを行います。
本来一処置一手洗い、ケア前後の手洗いが原則ではありますが、しっかり手洗い出来るか?
そこはその家庭によるのです。
例えば台所の排水が悪く使用できないこともあります。
そのようなお宅は、本人は自炊はおろか洗顔や入浴といったことも全くしていないことも。水は出ても排水が悪いだけなら、桶に汚水をため、外に流しに行くという家庭もあります。
このようにそれぞれの事情があるので、なかなか「手洗いするので水道を貸してください」ということも言い出せない場合もあります。
そんな時に私たちに欠かせないのが、速乾性擦りこみ式手指消毒剤です。
私たちは病院で使用するような大きなボトルは持ち歩くことはできません。
小さなボトルに詰め替えて使用しますが、この際に注意が必要です。
手の擦りこみ消毒をする際には3mlが必要とされます。また手のひらにためた消毒剤でまずは指先、爪を消毒、それから全体に擦りこんでいくという正しい方法を理解することが重要です。
感染対策というのは、利用者、その家族を守り、私たち自身も守る重要なことなので、在宅では私たちの出来る限りの方法で行うように注意して感染対策を行っています。