
今回は、訪問看護ステーションの経営者が、経営者の視点で見た訪問看護ステーションに欲しい人材、訪問看護には向かない人材について記事を作成して貰いました。
実際に現場で働いている人などと違い、経営者としての視点はとても興味深いと思いますので、
ぜひ読んでみてくださいね。
国は在宅医療を求めている
現在我が国では医療介護改定を通して地域在宅医療を推進しています。
入院期間の短縮、維持期病床の削減、医療でのリハビリテーションに制限日数を持ち、介護保険の利用を促す、在宅看取りの件数増を求める等からも明らかです。
その中でも中心となるサービスは「訪問看護ステーション」であり、医療と介護の中心に位置する大変重要な役割を担っています。
そもそも訪問看護師はどんな仕事をするのか?
訪問看護と聞けば、「1人で何もかも判断するので怖い、色々な疾患があり勉強が大変そう」とよく入職前の方やスカウトした方から声が聞かれます。
訪問看護師が行う業務
では実際訪問看護師が行う業務にはどんなものがあるでしょうか。
大きくまとめると以下の2点になります。
1.診療の補助
2.療養上のお世話
実務として多いものは、創の処置、点滴、入浴支援、服薬管理、家族指導、住環境についてのアドバイス、リハビリテーションになります。
経営者から見る訪問看護師として採用したい人材
では、経営者の観点から見る訪問看護師として採用したい人材についてお話します。
経営者が強く欲しいと思う人材は以下の点を押さえている場合が多いです。
話しが苦手でも良いので、相手の訴えを傾聴できる
訪問看護師は自宅や有料老人ホームなどの生活の場に訪問します。
最も大切な資質は相手の訴えを傾聴し、悩みを引き出せるコミュニケーション技術です。
息付く暇もなく話せる能力ではありません。
利用者が求めているものは、相談相手であり、必要なケアを提供してくれる看護師です。
訴えを傾聴できる看護師には必ずファンができます。
「あの人は自分のことを理解してくれる。」
「あの人になら相談できる」
と利用者側から声が上がります。
訴えの傾聴や悩みを引き出して信頼関係が築ければ、その後の生活指導もスムーズに進む傾向にあります。
ゆっくり訴えを聞ける人材は経営者としても、また在宅生活支援を必要とする利用者にとっても、非常にありがたい存在です。
相手の考え方を尊重できる
在宅に訪問すると医療の理想的な形とかけ離れたケア、生活に遭遇する機会は多いものです。
利用者や家族にはそれまで過ごした人生があり、様々な選択や決断を通して今の生活があります。
在宅支援の場で重要な点は「まず相手の存在、価値観、死生観を受け入れる」ことに尽きます。
例えば自宅で寝ている時に、知らない人が突然やってきて
「あなたの食生活はおかしい!」
と言われたらどう感じるでしょうか?
決して良い気持ちにはならないでしょう。
状況によっては、介入拒否に繋がるかもしれません。
考えを尊重するとは、
「相手を受け入れ、共感し、無理やり変えようとしない。でも真に必要なことはしっかり伝えて理解を求める」
と言う気持ちで訪問することになります。
問題解決を長期プランで考えられる
医療機関では患者の状態変化に素早く適切な対応が求められます。
もちろん訪問看護においても明らかな外傷、脳血管疾患の急性発症があれば即時対応すべきです。
では「入浴できておらず、皮膚汚染が激しい」場合はどうでしょう。
理想は直ぐに入浴介助を実施、身体を清潔に保つ努力することですが、サービス拒否がある利用者はそう簡単にはいきません。
利用者が何故拒否しているのか、じっくり時間をかけて聞き取り、問題解決を焦らず取り組む必要があります。
他職種との関係性を大切にできる
訪問看護ステーションでは様々な職種の人と連係をします。
例をあげれば、医師、ケアマネ、リハビリ、医療機器、福祉用具業者医療機関スタッフ、保健所、役所、消防所などです。
その全てが利用者の在宅生活をサポートするチームになります。
関係機関との信頼関係、適切な情報共有も重要な役割になります。
社会人として礼儀やマナーがある
言うまでもありませんが、相手の自宅に伺う以上、社会人としてのマナーや礼儀は大切です。
プロとして訪問する以上、それ相応の対応が求められます。
看護師としての経験を求める経営者もいますが、知識や経験は訪問看護で積めば良いと考えます。
最も重要な点は「利用者本人や家族、連携機関と良好な関係を築けるか」です。
どれだけ優れた技能や知識があっても、利用者からの信頼関係が得られなければ意味はありません。
人生を支える伴走者になれる看護師が訪問看護ステーションには必要です。
訪問看護師に向かない人の特徴
長年色々な看護師を見る中で、訪問看護師には向かないと感じる人もいます。
そのような方に共通するものは以下の5点です。
自信に満ち溢れ個人プレーに走る
自信を持つ看護師は、難しい利用者の対応を積極的に行う、他のスタッフの相談窓口になるなど頼りになります。
しかし自信が過信に変わった時、他のスタッフのケアを軽視する、ケアの方針を勝手に決めてしまうなど個人プレーに走る場合があります。
チームとしての和が保てず、ステーション内の不和に繋がり、職場環境の悪化します。
このような看護師は、他の連携機関との関係性も上手くできないケースが多くあります。
相手の話を遮り、自身の話ばかりする
前項で訴えを傾聴する大切さを説明しました。
相手の会話を遮り話題を乗っ取ってしまう、そのような事案からクレームに発展したケースもあります。
自身の話をするのは大切ですが、適度に調整する必要があります。
トラブル発生リスクが高いため、このような方の採用は見送る場合があります。
介護職などの他職種を見下す
訪問看護には看護師やリハビリ職、事業所によって事務員が在籍しています。
専門職としてのプライドが高い方に多いですが、ヘルパーさんやケアマネさんに対して
「何も分かっていない、言っても理解をできない」
と見下して適切な情報提供を怠る人がいます。
多職種連携は地域医療を支える最重要項目です。
他職種を尊重できない方は訪問看護ステーションのみならず、地域にとって害となる可能性があります。
専門以外の領域を見るつもりがない
専門や好みの領域はどの看護師にもありますが、訪問看護では単体の疾病は珍しく、ほぼすべての方が内科や循環器、脳血管疾患、認知症など複合した症状を訴えます。
専門・認定看護師を持っている看護師であっても、特定領域のみ担当してもらうことはまず不可能です。
自身の専門のみ見たい方はまず訪問看護には向きません。
新しい事象を学習する意欲がない
前項に付随する内容になりますが、過去経験の無い疾患の方も依頼があります。
神経難病、小児疾患、特殊な医療ケアなど内容は様々ですが、うちは経験がないからと依頼を断る経営者はいません。
新しい疾病を受け持つ際は、事前学習、医療機関からの情報収集、外部研修の受講と、新しい知識や技術を進んで学ぶ姿勢が必要になります。
能力に優れた、もしくは口が達者な看護師が優れた訪問看護師になるわけではありません。
相手を想える心が訪問看護師には何より大切です。
謙虚に学ぶ姿勢を持ち、自身を高める気持ちがあれば、是非訪問看護を選んでみてください。
まとめ:利用者や家族を支える訪問看護師になろう
簡単な訪問看護の業務、訪問看護師に向いている人、向いていない人の特徴をご紹介しました。
真摯な対応や気持ちがなければトラブルにもつながる難しい部分もありますが、在宅は非常に学びの多い現場です。
1対1で相手に寄り添う看護が提供したい方は是非訪問看護にチャレンジしてください。
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