
はじめに
作業療法士が訪問看護ステーションで働くにあたり、病院でのリハビリ業務とは異なる点がいくつかあるかと思います。
まず、病院のようにすぐ近くに医師や看護師がいるとは限らないということです。
これは、利用者様の全身状態が急激に悪化した場合など、最初の判断を自らが行わなければならない、ということになります。
また、利用者様の自宅または施設など、生活の場でリハビリをするという点も、病院でのリハビリとは異なります。
より利用者様の生活スタイルを把握できるため、その上でどのようなサービスや環境が必要であり、適しているかを考え、提供できなければなりません。
そこで今回は訪問看護ステーションで働く作業療法士の押さえておきたい知識や資格をご紹介します。
急性期リハビリの知識の重要性
まず訪問リハビリを行うにあたり必要なことは、急性期リハビリの知識ではないかと私は思います。
一見すると、急性期リハビリと維持期である在宅のリハビリは、正反対のことに思えるかもしれません。もちろん、在宅で暮らす利用者様は、全身状態が比較的落ち着いている方が多いです。
しかし、複数の疾患または障害を合併していることもまた多いのです。そのため、いつ急変してもおかしくない状態であると言えます。
実際に、私が訪問した中でも肺炎を起こして苦しそうにしていたり、胆嚢炎による腹痛の訴えが強い利用者様がいました。これは全て病院に救急搬送された後、検査の結果、判明したことです。
このように、訪問した際、利用者様がいつもの状態と比較して何かおかしなところはないか、あるとしたらどのようなことが考えられるかを理論立てて考える知識が必要となります。
つまり、フィジカルアセスメント能力です。看護師と共通した知識とも言えます。
在宅サービス・環境調整に関する知識の重要性
更に私が考えているのは、生活の場でリハビリをするため、在宅生活に利用できるサービスや福祉用具・住宅改修に関する知識の重要性です。
サービスに関しては、例えば病院に通院するのに歩行がなかなか難しい場合は、
・介護タクシーを利用するのか
・それとも玄関先までは出られるためタクシー券を利用するのか
などの細かな点です。
これはその利用者様の心理面や経済的側面を合わせて考えなければいけません。
また、市区町村によって利用できるサービスが異なっていることもあるため、その土地に合わせて知識を常に刷新していく必要があります。
更に、利用者様の生活動線や動作能力を把握し、より効率的に日常生活動作を行えるよう、福祉用具や住宅改修の知識も必要です。
しかし決してセラピストの押し付けとならないよう、利用者様の独自の方法と折り合いをつけたり、どのような動作なら行いやすいのかを評価しながら、時にはデモンストレーション期間を設けることも必要です。
おわりに
このように、訪問リハビリでは病院と環境が異なる点から、私が必要と考える作業療法士としての知識を主に2つ挙げました。
最後になりますが、必ずしも何らかの資格が必要とは、私は考えていません。
もちろんその知識を習得する過程で資格を取ることはとても良いことだと思っていますし、現に私はそういった目的で福祉用具プランナーの資格を持っています。
他にも認定作業療法士をとったり、3学会呼吸療法認定士などの資格をお持ちの方もいます。
しかし大事なのは資格をとるということではなく、訪問リハビリで必要だと考える上記のような知識、またはそれ以外にも利用者様にとって有益となる知識を身に付けた上で、責任をもって訪問リハビリに取り組むことなのではないかと思います。