
訪問看護(在宅領域)の作業療法士(OT)は、主に介護保険と医療保険内で、利用者様のご自宅に出向いてリハビリを行います。まれに自己負担で行う場合もあります。
今回は、作業療法士が訪問看護で行う多い仕事の紹介とその際に気を付けるべき注意点(ポイント)をご紹介します。
訪問看護に興味のある人は、ぜひ読んでくださいね。
訪問看護で作業療法士が行う事が多い症状
訪問看護ステーションに在籍する作業療法士が行う訪問リハビリは、
大きく介護保険と医療保険で指定された症状に対して行います。
また、保険上限額を超えてリハビリを希望する人には、自己負担で訪問リハビリを提供することもあります。
介護保険で多い症状
介護保険で多い症状は、次のような疾病が挙げられます。
脳梗塞後遺症などの脳外科疾患
慢性閉塞性肺疾患など呼吸器疾患
慢性心不全などの循環器疾患
高齢に伴う廃用症候群
医療保険で多い症状
次に医療保険で多い症状は、次のような疾病が挙げられます。
パーキンソン症候群や脊髄小脳変性症などの神経難病
重症心身障害児(者)
末期癌
自己負担でリハビリを行う人
自己負担で訪問リハビリを行っているのは、他のサービスを保険上限額まで利用しており、それでもリハビリを希望される方などが多いです。
主にこのような方々に訪問リハビリを実施します。
訪問看護で作業療法士が行う療育の内容
仕事内容としては、その方の心身機能や全身状態に合わせ、
関節可動域訓練や筋力トレーニングなどの運動療法、基本動作やADL動作練習を行うことが多いです。
また脳外科疾患の方には麻痺側の促通練習、呼吸器疾患の方には呼吸方法練習・指導なども行います。
このような内容は、病院や施設で行うリハビリとの大きな違いはありません。
訪問リハビリでの療育は、より実践的であること
訪問リハビリの特色として挙げられるのは、自宅内外の環境調整です。
公共交通機関を利用したり、近所のスーパーに歩いて行くなどの外出練習も行います。
病院や施設であれば、自宅や屋外でのリハビリを行う範囲は限られますが、訪問リハビリではより実践的に行うことができます。
訪問リハビリの体験談・実際に療育を行った実例
利用者様の症状と家族との関係
例えば私が担当した利用者様の中では、脳梗塞後遺症で軽度の左片麻痺がある方で、自宅退院後、ご家族にお1人での外出を禁じられている方がいました。
その方は市営団地の5階に住んでおり、エレベーターがないため、5階までの上がり降りが必要でした。
麻痺の程度は軽く、階段昇降動作自体は安定して行えていました。
しかし耐久性が低く、5階まで階段を昇ることに不安がありました。
作業療法として実施した療育内容
そのため、リハビリで耐久性向上と階段昇降動作の安定性向上を図り、筋力トレーニング、左上下肢促通練習、階段昇降練習に加えて屋外歩行練習を実施しました。
それにより手すりを把持することで、5階分の階段昇降が自立して行えるようになり、更に耐久性も向上し、連続して動作できる時間が長くなりました。
作業療法実践した結果と家族の反応
その旨をご家族に伝え、実際に動作を見て頂き、お1人で外出することへの了承を頂くことができました。
その後その方は近所への買い物に行けるようになり、またバスに乗って夫が入院する病院に出かけることができたりと、生活範囲が拡大しました。
このように訪問リハビリは、利用者様の生活の場で行うこと可能なため、より生活に直結する動作練習を行うことが多いです。
訪問看護で作業療法士として大切な家族フォロー
また訪問リハビリで多い仕事として、ご家族への支援があります。
ご自宅で利用者様と共に暮らすご家族の中には、利用者様の身体についての心配や、介護方法の疑問点、ご自身の介護疲れ、生活の中での困り事を訴える方も少なくありません。
訪問看護での家族フォローの例
例えばご家族が利用者様にかかりきりで外出する時間がなく、家事などが行き届かないなどの訴えがあるとします。
その場合、ケアマネージャーに連絡をしてショートステイやデイサービスを追加してもらうなどの対応をします。
在宅では利用者様のみではなく、ご家族を含めた生活全体の包括的な支援をする機会も多いと言えます。
訪問リハビリで作業療法士が気を付けるべき注意点・ポイント
気を付けるべきポイント:利用者様の状態変化にいち早く気付くことが必要
訪問リハビリでは、多くの場合単独での訪問となるため、利用者様の状態変化にいち早く気付くことが必要となります。
そのため、利用者様の全身状態を注意深く評価しなければなりません。
注意点:循環器疾患がある場合
循環器疾患がある場合は血圧や脈拍を計測するとともに、不整脈や動悸などの胸部症状の有無を確認します。
注意点:呼吸器疾患がある場合
呼吸器疾患がある場合は呼吸様式の観察、息切れや呼吸苦などが出現していないか、動作後の血中酸素飽和度の低下はないかなど、時には聴診をして確認します。
気を付けるべきポイント:利用者様の生活様式を把握すること
また、もう1つ訪問リハビリで気を付けるべきポイントは、利用者様の生活様式を把握することです。
長く自宅で暮らしていると、その方なりのやり方や過ごし方が確立します。
そのため、セラピストが良かれと思って提案した動作方法を受け入れられなかったり、せっかく導入した福祉用具を全く使っていないなどの事態が起こりやすいと言えます。
注意点:夜間に歩行での移動が危険である評価した場合
夜間に歩行での移動が危険であると評価したため、ポータブルトイレの利用を勧めるとします。
しかしポータブルトイレに対して否定的な方は多く、結局使わずにトイレまで行って転倒してしまうという事例は多いです。
その場合、寝室からトイレまでの動線を簡素化するとともに、足下灯の設置や手すりと家具を把持して歩行できるように観光を調整する方が、結果的に転倒を防ぐことにつながることもあるのです。
注意点:屋外でリハビリを行う場合
屋外でリハビリを行う場合は、屋外で上記の症状が出現した場合、座って休める場所があるかなども事前に調べておく必要があります。
どこまでは自力で休憩はどこでするかなど、事前のシミュレーションをしておく必要があります。
天候によっても対応が変わります。雨天なら中止と言うもありですが、今後の生活を考えた場合、雨の中でも移動できるように促す場合もあります。
そのため、どこまで改善できたら、雨でも屋外で訓練をするかなど、ご家族含めて確認をしておく必要があります。
このように、その方の生活様式を把握し、より安全に安心してご自宅で過ごせるよう支援するという点は、訪問リハビリにおいては特に配慮しなければなりません。
まとめ
ここまで、作業療法士(OT)の訪問看護で多い仕事と注意点・気を付けるポイントなどをご紹介してきました。
訪問看護は様々な状況の変化に対応した療育が必要になるため、色々な工夫やご家族との関係が非常に重要になります。
これは一般病棟・クリニックなどと違って、より生活様式に合わせた実践的な訪問リハビリが必要になります。
また、一人で知恵を出していくことになりますので、訪問看護の面白い所でもあり、利用者様に効果がでている点が明確になるので、とてもやりがいを感じる仕事でもあります。
訪問看護に興味のある人が、少しでも増えてもらえると嬉しいです。
読んでいただきありがとうございました。