
訪問看護師は単独でサービス提供を行い、他事業所との連携や医療機関への報告・相談など、その業務内容は多岐にわたります。
日本の訪問看護ステーションでは、50%近くの事業所で「訪問看護師が不足している」という状況です。
求人を出しても中々面接者が来ない、面接を行っても採用に至らないなど様々なケースがあります。
そのような状況にあるため職員を新規採用する上で、経営者も慎重に人選を行います。
筆者がこれまでに採用面接を行い、実際に雇用に至った方は看護師で7割、リハビリテーション職で3割未満です。本記事では、採用に繋がる履歴書の記載内容や、面接時のポイントをお伝えします。
求人申し込み先はどこからなのか?
訪問看護へ求人依頼は複数のパターンがあり、一般的なもので言えばハローワーク、人材紹介会社、ホームページや電話による直接申し込み、職員からの紹介です。
ハローワーク
過去最も一般的な求人方法でしたが、最近ではやや減少傾向です。
ハローワークは年齢や性別程度の情報のみ企業に提供するため、先入観なく面接を行えます。
人材紹介会社
ここ数年で一気に件数が増えているパターンです。求職者は労力をかけず就職先を探せるメリットがあります。しかし企業側のデメリットが明確で、職員雇用時に紹介会社へ高額の紹介料を支払う必要があり、採用に踏み切れない理由の一つになります。
紹介会社から多数営業の電話が掛かってきますが、面接を行う旨を伝えた後、一切の連絡なく話が消えるケースも多数あり、紹介会社の質にも差が目立ちます。
また紹介時も「人柄も良く明るい性格のため、御社の即戦力となります」といった内容に加え、簡単な勤務歴を紹介する程度です。
〇〇紹介会社からの話は全て断ると決めている事業所もある程です。
費用面の問題から、経営基盤がしっかりとした病院併設のステーションへ就職するケースが多く、小規模な事業所ではまず紹介会社からの採用は難しいでしょう。
直接申し込み
筆者は1名のみ直接電話連絡を頂いた経験があります。
率直な意見を言えば、非常に良い方法です。
管理者-求職者双方が直接やり取りを行い、業務内容や訪問の傾向についての説明、求職者からの質問内容などをやり取り出来ます。
人柄なども把握しやすく、訪問看護への就職に対する熱意が伝わり、求職活動が成功する可能性は高まります。
履歴書で重視するポイント
履歴書の要不要については議論の分かれる点ではありますが、本記事では割愛いたします。筆者の履歴書に対する認識は、相手との会話の中で本人像を掘り下げていくため必要なツールです。記載内容が充実していれば、面接も沿った質問が多くなります。履歴書で主に確認する項目は以下のようになります。
①勤務歴
②短期離職の有無
③研修受講歴について
④訪問看護に対する想いが何かあるか
勤務歴について
これまで勤めてきた勤務先から、どのような利用者に対応出来るのかを推測します。
注目する経歴としては、「精神科」「小児科」の経歴記載です。
小児科の経歴について
医療的ケア児に対応できる看護師は全国的に不足しており、小児対応をしている、もしくは今後小児訪問に力を入れていく予定がある事業所での採用率は格段に高まります。
精神科の経歴について
在宅医療の現場では、単体の疾患ではなく、複数の疾患を持つ方が多い傾向にあります。
中でもうつ病、認知症、統合失調症などの方に対する対応を悩む事業所も少なくありません。
精神科の経験がある方は、病棟経験を活かし、利用者対応やスタッフへの情報伝達、指導も行ってほしいと思える人材です。
整形外科の経歴について
逆に「整形外科」のみ経験している方は、履歴書の確認は重点的に行いません。
整形外科疾患のみの利用者は極めて少ないため、履歴書から得られる情報はほぼ不要と判断、人柄や性格などを中心に確認します。
管理職の経験について
管理職の経験は重要視するポイントではありません。
採用に至った場合、給与面の合意が得られるか?と考える程度です。
短期転職の有無について
訪問看護ステーションの人材育成は非常に長い期間を要します。
そのため、採用時には長く勤めてくれる方を求めるのは当然と言えます。
過去2-3年の間隔で転職を繰り返している方は非常に不利だと考えてください。育成期間やコストの面を考慮し、筆者であれば積極的に採用しません。
複数キャリアの中で、1-2度の短期間転職であれば特に問題はないでしょう。
研修受講歴や活動について
これまでに受講した研修についても履歴書に記載をお勧めします。
記載をおすすめしたい研修受講歴や活動
特に記載をおすすめしたいのは「認知症ケア」「褥瘡ケア」「呼吸ケア」「フィジカルアセスメント」「小児看護」の受講です。
ご自身がどのような努力をしてきたのかアピール出来ます。
面接のやり取りに自信が無い方は、この項目を充実させましょう。
経営者側も研修受講歴は話題を広げやすい内容です。
「この程度の研修は書いても仕方がない」と思わず、なるべく記載をして下さい。
訪問看護に対する想いについて
履歴書には「志望の動機」欄があります。
「貴社の理念に共感し~」などのお決まりの文章は意味がありませんので、本気で採用を目指すのであれば避けましょう。
採用されるための志望動機とは?
動機欄には以下のような項目を記載しましょう。
・訪問看護に対する興味を持った理由やエピソード
・どのようなケアを提供できるようになりたいか
履歴書の確認項目をいくつか述べました。経営者や管理者の目に留まる記載を心がけましょう。
面接で重視するポイント
次に面接の注意点です。基本的な応対や衣類については記載をしません。
上述した履歴書の項目が書いてあれば、その内容についての掘り下げが中心になります。
訪問看護の面接で意識して欲しい点
面接で意識して欲しい点は以下のようになります。
・訪問看護での勤務に対して意欲的な発言
・自信のある領域についてアピール、不明な点に対する質問
・自信がない部分に関しては、「自信は無いが少しずつ学んでいく」と伝える
面接の際には人柄をある程度把握出来るよう、様々な質問を重ねます。
訪問看護が未経験であれば、不安な部分や分からない点があっても問題はありません。
正直に、意欲的な印象を与えるよう心がけましょう。
短期間で転職を繰り返した人が聞かれる内容
短期間での転職を繰り返した方は面接で必ず理由を問われます。
キャリアアップ、人間関係の問題、精神的ストレスなど可能な限り答えてください。
その上で、訪問看護では長期勤務出来るよう頑張りたい旨を伝えましょう。
面接の際には、あなたも経営者や管理者の人柄を見てください
また面接の際には、求職者側から経営者や管理者の人柄を見る点も重要です。
・これから一緒に業務を行っていけそうか?
・信頼に足る人間か?
相手の会話から感じるものを大切にしてください。
求人申し込みは法人、求職者は対等であるべきです。
合わないと感じた経営者が運営するステーションで勤務するメリットはありません。
まとめ
履歴書と面接のポイントは自身の強みとなる部分を正確に判断し、それを経営者や管理者に伝える点に尽きます。
訪問看護ステーションは非常に魅力ある業種で、今後益々地域医療の中核を担うサービスへ発展します。
在宅の現場では「チーム」が非常に重要です。
事業所、介護機関、医療機関、様々な連携を図りチーム医療介護を提供します。
人対人であり、残念ながら相性や考え方の差は当然生じます。
勤務するステーションの中で良いチームとして活動できるかは、経営者や管理者の技量に大きく依存します。
求人申し込みの際には、堂々と質問をして経営者や管理者、事業所の状況を知りましょう。
経営者が職員を選ぶよう、求職者も事業所を選ぶ権利があります。
「このステーションで働きたい」と強く感じる事業所と出会えるよう、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
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