
私は訪問看護師になる前には、ブランクはあったものの病棟看護師の経験が約12年ありました。
小児や成人、老人看護の経験もあったので、訪問看護師になっても、在宅でのケアの特徴や方法を教えてもらえれば一通りの仕事はできるだろうと考えていました。
訪問看護師になった当初、先輩看護師に同行して一緒に利用者様のお宅を訪問して回りました。
そして約3か月が経過したころ、私は初めての受け持ち利用者を担当することになったのです。
面談、家庭調査などをケアマネや訪問看護ステーションの所長と一緒に行いましたが、さまざまな情報をまとめ、これからの看護計画を立てていくのは私。
そこで初めて、私が作成した利用者さんに関する情報は、問題解決モデルになっていると指摘され驚きました。
私はそれまで病棟看護師の経験しかありませんでしたから、患者さんのできないこと、障害となっていること、問題となっていることに自然と注目するという習慣がついていました。
病院では、問題点ばかりを注目していた
そのため利用者様のお宅にいって、まず目につきやすい問題点ばかり注目してしまったのですね。
これまでの看護計画の立案と同じようにこれができない、これも問題だと思って、そこからアセスメントをしてケアを内容を決めていけばよいと思ってしまったのです。
長年、訪問看護の経験を積んできた所長の視点
しかし長年経験を積んできた所長は異なる視点から、利用者様を分析していました。
それは本人の持つ能力を最大限に伸ばしていく方法です。
例えばこの動作はできないけれど、別の動作が出来るから、これを応用してはどうか?
ということや、ここは出来るから、わざわざやり方を変えてまで訪問看護が介入しなくてもいいということを指摘されました。
訪問看護ではストレングスモデルでケアを考えていく
このような方法をストレングスモデルといいます。
ストレングスモデルは、その利用者の病気や治療の考え方を尊重し、意志や希望に基づいてケアを考えていくという方法です。利用者様の持つ能力を最大件に引き伸ばすということに注目します。
そのためただ看護師が調査をして把握して提案するという方法ではなく、利用者ととことんコミュニケーションを図り、まずは相手の希望を知る、一緒に考えるという姿勢が一番重要なのだということを学びました。
病棟看護師として勤務していた時には、全く意識もしたことのなかったストレングスですが、訪問看護師になってみると、それをいかに活用していくかということが大きなポイントになると思いました。
またこれが在宅の強みでもあり、面白さでもあるととても勉強になった出来事でした。
長年の看護経験があると、どうしても自分の看護観が固定してしまったり、これまでの看護過程の展開が繰り返されるということもあります。しかし訪問看護ではそんな自分の考え方をもう一度見直す良いきっかけができたと思います。