
ここでは、一般病棟やクリニックなどとの仕事と訪問看護ステーションでの仕事の違いや、
訪問看護ステーションの仕事の流れをご紹介します。
訪問看護ステーションの仕事は、その日に割り当てられた利用者の自宅を訪問して、必要なケアを提供するということにつきます。
しかし訪問看護を経験したことがない人は、
どのように利用者を割り当てている?
どんな風に移動してどのくらいの時間でサービスの提供をするの?
自宅で提供する看護とは、どんな内容になるの?
と疑問を持つことも多いのではないでしょうか。
今回は訪問看護ステーションの仕事についてご紹介します。
訪問看護ステーションの仕事は、一般病棟・クリニック等と何が違うのか
訪問看護の仕事内容は一般病棟で行う処置やケアと大きく変わらない
訪問看護の仕事内容ですが、
一般病棟で行う処置やケアの内容が大きく異なるわけではありません。
訪問看護であっても医師の指示のもと医療処置を行います。
基本的はバイタルサイン測定、観察をした上で
医師の指示のもと
看護計画に沿って処置、ケアなどを行います。
この点では、一般病棟などと大きく変わることがありません。
しかし、訪問看護ステーションと一般病棟・クリニックなどの仕事とは、環境やケアの進め方に大きな違いがあります。
訪問看護は、在宅と言う「場所」や「物の制約」があること
決められた時間の中で行う業務や支援内容は、利用者様の介護度や生活環境によって変わってきます。
利用者様の状態に合わせて、看護プランを立案するという所までは、一般病棟も訪問看護も同様です。
しかし、一般病棟の中で、
十分な資源や設備が整っている状態で入院されている場合と、住まいに戻られて日常生活を送られている場合とでは、使用している物品の違い、物品配置や使える場所の範囲などは個人で差があります。
例えば、洗髪などの清潔援助だとしても
在宅にあるものを使わせて頂くので、同じような状態の利用者様でも、ケアの進め方や使える時間が大きく変わってきます。
ベッド上洗髪はケリーパッドの代わりにスーパーの袋と吸水シート、
陰部洗浄はペットボトルの蓋に穴をあけたもので行うなど、身の回りのものを使って対応します。
お風呂の大きさや設備も家によって違いますし、ベッドが動かせない、ギャッジアップができないといったこともよくあります。
このように在宅であると言う点で、工夫を要する場面も多く、より個別性が求められる事もあります。
利用者様へのケア時間の違い
多くの病棟では、プライマリーナーシングまたは、チームナーシングを採用して、利用者様に看護を提供するのだと思います。
一般的な病棟の看護業務の場合、1日を通して担当利用者様の日常生活援助や看護ケアなどを行いますが、
訪問看護の場合は、集中して担当をすることになります。
訪問時間や頻度は利用者様によって異なりますが、
1回に30分~1時間半、1週間に1回~3回程度訪問する場合が多く、中には毎日訪問という方もいます。
さらにそれが数か月、数年と続いていきます。
自分の訪問が徐々にその方の生活の一部になっていくのは嬉しいですし、訪問の期間が長くなるにつれて、
利用者様やご家族から信頼されていると実感することも増えていきます。
「あなたに会えるのが楽しみ、顔を見られて嬉しい。」と言って頂けることもよくあります。
看護師として、利用者様に感謝して頂く以上に嬉しいことはありません。
訪問看護師になってから、忙しさの中で忘れかけていた看護の基本を思い出すことができた気がします。
また、たくさんのことを同時にする必要がないので、病院で働いていた頃のように常に何かに追われている気分にはなりません。
患者さんを待たせてしまうことへの罪悪感もありません。
ナースコールや点滴アラームの音に振り回されることなく、落ち着いて丁寧にケアを行うことができます。
訪問看護の間は、利用者様1人に集中して看護ケアを行わせていただけるという部分ではやり甲斐を感じられるポイントだと思います。
家族の協力関係の違い
家族の協力も利用者様によって違いが出てきます。
利用者様のご意向はもちろんですが、利用者様の状態によっては家族のご意向に沿った看護ケアの介入が、一般病棟の時以上に必要になってきます。
そういった違いがある中で、看護の質は落とさずにケアを行なっていくためには、工夫と経験が必要とされます。
その工夫と経験の部分は、看護師としてのやり甲斐を感じる部分でもありますし、難しさを感じる部分でもあります。
訪問看護の処置・ケアで特に多いと排便コントロールの援助
訪問看護の処置・ケアで特に多いと思う内容は
排便コントロールを整えるための援助です。
同居のご家族がいるのであれば
お話を聞いたりしながら、下剤の内服量や内服するタイミングの調整をしたり
定期的に浣腸を実施したりします。
訪問をすると言う移動作業があること
訪問は基本的には1人で伺います。
高齢者住宅の中であれば、お部屋番号を間違えなければたどり着けます。
が、ご自宅に訪問する場合だと、訪問看護ステーションから、利用者様のご自宅までの道順を覚えたりするのも訪問看護の特徴です。
ここまでが、実際の仕事として作業や処置をしていく上での環境の違いです。
ケアの視点や心構えの持ち方も大きな違いです
しかし、訪問看護では、ケアの視点や心構えの持ち方も大きな違いがあります。
訪問看護での重要な視点は「できる事を維持していく」と言う事
そして、在宅で療養される利用者様にとって
「できる事を維持していく」という部分も
訪問看護の視点ではとても重要になっていきます。
利用者様の状況にもよりますが
・ベッドから起きて座る
・車椅子へ移乗する
という動作も介助が必要な方が多くいらっしゃいます。
そういう方にとっては
「座る」「動く」という動作自体が
リハビリに繋がっていきます。
もちろん、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの他職種が
リハビリ目的で介入してくれている場合もありますが
訪問看護でも、利用者様の状態チェックと合わせ介入していきます。
介護をしてくれる家族が積極的に離床を促してくれる場合もありますが
体格差がある等の理由から移動の動作はできない家族も多いです。
また、出来たとしても、かなりの労力が伴います。
なので、訪問看護などの時間で少しでも、今ある機能を落とさないためにも離床を促していきます。
家族のメンタルフォローも必要
また、介護をしている御家族のメンタルフォローや体調を気遣うことも重要な仕事だと言えます。
利用者様の生活を支えている家族にも各々の生活があります。
自分の生活と介護を同時にしていく上で悩むことや医療者へ相談したくなる場面も
当然あると思います。
24時間介護をしている御家族の中にはどこか気が休まらないと感じて、疲労困憊になってしまうケースや老老介護や子育て中という場合もあります。
時には、看護・介護をしているご家族の息抜きや身体の休息も必要になります。
そのため、メンタル面での細やかな配慮や介護の負担が軽減できるような配慮は
利用者様もご家族様も支援していく訪問看護にとっては、大事な仕事内容になっていきます。
事前の対策と情報共有が大切
そして、一般病棟では、身近なところに同僚のスタッフや医師などの他職種がいますが、訪問看護は、基本的に1人で訪問するからこそ情報共有は大切です。
事前に分かっていることや予測できることに対しては
対策をしていく事で不安なく業務が行えます。
また、在宅療養中は、療養環境を整えるためにケアマネージャーの介入や
訪問看護だけでなく、訪問介護や訪問リハビリも導入されている方が多くいます。
一般病棟のように他スタッフと一緒に介入する機会は少ないかもしれませんが、利用者様の環境を整える意味では、病棟以上に連携は必須になります。
さらに、主治医は、病院で勤務している場合が多いので利用者様の状態報告なども
電話連絡だけでなく、状況に応じてメールやFAXを使用して連絡をしておくこともあります。
そのため訪問看護では、ご本人やご家族、ヘルパーさんなどの他職種とも相談しながら、
ひとりひとりの利用者様に合わせてケアの方法を工夫していきます。
大変だと思うこともありますが、場面に合わせて臨機応変に対応する力をつけることができ、
看護師としていい経験になっていると感じます。
訪問看護は、コミュニケーション能力や判断力、想像力を向上させ成長できる事ができます。
訪問看護の一日
ここでは、そんな訪問看護ステーションの1日の仕事の流れをご紹介します。
申し送りから仕事が始まる
訪問看護の場合は、自宅から訪問先へ直行するという事業所もあります。
しかし私たちの訪問看護ステーションでは、8時20分朝の申し送りから仕事が始まります。
その日の訪問先の確認、利用者の状態の確認、連絡事項など多岐にわたります。
訪問看護ステーションによっては、介護事務やケアマネが在籍することもあり、連携を図るためにも申し送りは重要です。
申し送りの後は車で訪問先に移動する
申し送りが終了すると、訪問バックやカルテ、物品などの確認を行って車や自転車で訪問先に移動します。
訪問看護ステーションからの移動距離は、近い場所で約5分、遠いところになると30分かかることもあるので余裕をもってその日の訪問先を決めています。
訪問看護師ステーションの多くは、5、6人体制で約50名の利用者の訪問を行います。
毎日、訪問の人もいれば、週一回の訪問の人も。大きなホワイトボードの配置表を使って半月分のスケジュールを立て管理しています。
もちろん利用者の状況や担当者会議、受診の同行、在宅診療といったものもあるので、スケジュールが変更されることも少なくありません。
提供するケアの内容は?
利用者によって状態は大きく異なるので、提供するサービスの内容も異なります。
一回の訪問が30分未満で、バイタルサイン測定や状態観察、あとは不安なことを聞いたり利用者、家族とのコミュニケーションをとって終了ということもあります。
また1時間未満の訪問で、観察から褥瘡処置、カテーテル処置、排便コントロールなど処置を行って終了という場合もあります。
提供するケアの内容は、医師の記入した訪問看護指示書やケアマネが計画したサービス提供票に基づいて行われますし、私たちが聞き取った利用者の希望を聞いて、優先順位をつけながらその都度必要なことを実施しています。
訪問が終了したら記録や翌日のチェックをして終了
利用時間や移動にかかる時間を考慮すると、大体午前中2~3件、午後2~3件訪問して終了になります。
私の在籍する訪問看護ステーションでは終了後、自宅に直帰することはまれで、一旦ステーションに戻り状態報告や記録をする、また翌日の準備やチェックをして一日の勤務が終了になります。
最終の訪問は、大体16時くらいには終わるようにしています。
その後の時間は、
ケアマネと連絡を取り合う、
緊急訪問の対応をする、
また自分の受け持ち利用者の訪問看護計画や訪問看護報告書の記入、また利用者一人一人の処置手順の見直しなどを行います。
まとめ
いかがでしたか?
訪問看護の仕事は一般病棟・クリニックとケアの対処等のおいては、大きな違いがありません。
しかし、在宅に訪問するため、限られた環境でケアや処置を行うと言う制限があります。
基本的に1人で訪問するため、コミュニケーションが特に重要になります。
その分、訪問看護は1人の利用者とじっくりと長い期間にかけて関係を構築できます。
幅広い業務をこなす必要があると同時に、多くの知識・経験を得られると言うやりがいもあります。
また、ワークライフバランスも良く、育休明けや短時間勤務にも対応してくれるステーションが多いです。
もし興味がある人がいれば、ぜひ訪問看護で一緒に働きましょう!
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